「GNDは1点に集めるべきか、それともベタ(プレーン)にすべきか?」
これは、GND設計でよく聞かれる疑問です。調べると「1点GNDが正しい」という記事もあれば「GNDプレーンにしろ」という記事もあって、どちらが正解か迷います。
結論から言うと、どちらも正しい ― ただし、周波数によって使い分ける必要があります。この記事では、それぞれの原理と適用条件を整理します。
そもそも、なぜGNDの引き方が問題になるのか
GND配線の問題の核心は、前々回の記事でも触れた共通インピーダンスです。
複数の回路が同じGND配線を共有していると、ある回路の電流変化が、その共通インピーダンスに電圧を発生させ、別の回路のGND電位も一緒に変動させます。これが「GNDを通じたノイズ干渉」です。

この共通インピーダンスをどう扱うか、が1点GNDとGNDプレーンの根本的な違いです。
1点GND ― 共通インピーダンスをゼロにする考え方
1点GNDの発想はシンプルです。各回路のGND配線を個別に引いて、1か所だけで合流させる。こうすれば、回路間でGND配線を共用しないので、共通インピーダンスが生まれません。

実験でも効果は実証されています。GND配線に故意に共通インピーダンスを持たせた基板と、1点GNDにした基板とを比較すると、1点GNDの方がGNDに乗るノイズが大幅に小さくなります。
1点GNDの弱点 ― 高周波では効かない
ところが、1点GNDには根本的な限界があります。
GND線を個別に長く引くと、パターン間に浮遊容量(ストレキャパシタンス)が生じます。高周波では、この浮遊容量を通じて電気的につながってしまい、せっかく個別に引いたGND線が「見えないところで接続」された状態になります。つまり、高周波では1点GNDの効果がなくなり、むしろ長いGND線がアンテナになってノイズを拾います。
1点GNDが有効なのは、直流〜低周波(おおむね数十kHz以下)の範囲です。オーディオ回路や低周波アナログ回路では今でも標準的な手法ですが、デジタル回路や高周波回路には向きません。

GNDプレーン(ベタアース) ― インピーダンスを徹底的に下げる考え方
GNDプレーンの発想は1点GNDとは逆です。共通インピーダンスを「ゼロにする」のではなく、「徹底的に小さくする」ことを目指します。
基板の1面全体をGND銅箔で覆う(ベタパターンにする)と、インピーダンスが面全体に分散され、どこから電流が流れてきても非常に低いインピーダンスで受け止められます。共通インピーダンスはゼロにはなりませんが、実害が出ないレベルまで小さくなります。

GNDプレーンは高周波でも有効
GNDプレーンは、1点GNDと違い高周波でも有効です。面状の銅箔は浮遊容量の影響を受けにくく、周波数が上がっても低インピーダンスを維持できます。さらに副次効果として、信号配線層のシールドにもなります。
2層基板では片面をGNDプレーン専用にするのが定番です。4層以上の多層基板では、電源プレーン(ベタV)とGNDプレーンをそれぞれ専用層に割り当てるのが標準的な構成です。
uSimmicsで比較する ― 1点GND vs GNDプレーン
低周波での比較

高周波での比較

周波数で考え方が変わる ― まとめると
| 1点GND | GNDプレーン(ベタアース) | |
|---|---|---|
| 原理 | 共通インピーダンスをなくす | 共通インピーダンスを最小化する |
| 有効な周波数 | 直流〜低周波(数十kHz以下) | 低周波〜高周波(幅広く有効) |
| 適した回路 | オーディオ、低周波アナログ | デジタル、高周波アナログ、混在基板 |
| 弱点 | 高周波で浮遊容量により無効化 | 共通インピーダンスはゼロにならない |
現代のデジタル基板では、クロック周波数が数十〜数百MHzに達するため、GNDプレーンが事実上の標準です。一方、オーディオアンプや計装アンプのような低周波アナログ回路では、1点GNDが今でも有効な選択肢です。
アナログ+デジタル混在基板はどうする?
アナログ回路とデジタル回路が同居する基板では、GNDをアナログ領域とデジタル領域で分割し、1か所だけで接続する方法がよく使われます。これは「分割GNDプレーン+1点接続」という、両者の折衷案です。接続点はA/Dコンバータの直下など、ノイズの飛び移りが最小になる場所を選びます。
まとめ
- 1点GNDは共通インピーダンスをなくす手法で、低周波アナログ回路に有効
- 高周波では浮遊容量で効果が失われるため、デジタル回路には不向き
- GNDプレーンはインピーダンスを面全体で最小化する手法で、高周波まで広く有効
- 現代のデジタル基板では GNDプレーンが標準。低周波アナログには1点GNDも選択肢
- 混在基板では「分割プレーン+1点接続」の折衷が現実的
GND設計に「絶対の正解」はありません。自分の回路の動作周波数を確認して、適切な手法を選ぶことが重要です。
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