1点GNDとGNDプレーンはどちらが正しい?低周波と高周波で考え方が変わる理由

ノイズ設計 / EMC

「GNDは1点に集めるべきか、それともベタ(プレーン)にすべきか?」

これは、GND設計でよく聞かれる疑問です。調べると「1点GNDが正しい」という記事もあれば「GNDプレーンにしろ」という記事もあって、どちらが正解か迷います。

結論から言うと、どちらも正しい ― ただし、周波数によって使い分ける必要があります。この記事では、それぞれの原理と適用条件を整理します。


そもそも、なぜGNDの引き方が問題になるのか

GND配線の問題の核心は、前々回の記事でも触れた共通インピーダンスです。

複数の回路が同じGND配線を共有していると、ある回路の電流変化が、その共通インピーダンスに電圧を発生させ、別の回路のGND電位も一緒に変動させます。これが「GNDを通じたノイズ干渉」です。

図1: 共通インピーダンスによる干渉。GNDを共用するほど、回路間の干渉経路が増える。

この共通インピーダンスをどう扱うか、が1点GNDとGNDプレーンの根本的な違いです。


1点GND ― 共通インピーダンスをゼロにする考え方

1点GNDの発想はシンプルです。各回路のGND配線を個別に引いて、1か所だけで合流させる。こうすれば、回路間でGND配線を共用しないので、共通インピーダンスが生まれません。

図2: 1点GND。各回路のGND線を個別に引き、1点で合流させることで共通インピーダンスをなくす。

実験でも効果は実証されています。GND配線に故意に共通インピーダンスを持たせた基板と、1点GNDにした基板とを比較すると、1点GNDの方がGNDに乗るノイズが大幅に小さくなります。

1点GNDの弱点 ― 高周波では効かない

ところが、1点GNDには根本的な限界があります。

GND線を個別に長く引くと、パターン間に浮遊容量(ストレキャパシタンス)が生じます。高周波では、この浮遊容量を通じて電気的につながってしまい、せっかく個別に引いたGND線が「見えないところで接続」された状態になります。つまり、高周波では1点GNDの効果がなくなり、むしろ長いGND線がアンテナになってノイズを拾います

1点GNDが有効なのは、直流〜低周波(おおむね数十kHz以下)の範囲です。オーディオ回路や低周波アナログ回路では今でも標準的な手法ですが、デジタル回路や高周波回路には向きません。

図3: 高周波では浮遊容量を介して配線間が接続され、1点GNDの効果がなくなる。

GNDプレーン(ベタアース) ― インピーダンスを徹底的に下げる考え方

GNDプレーンの発想は1点GNDとは逆です。共通インピーダンスを「ゼロにする」のではなく、「徹底的に小さくする」ことを目指します。

基板の1面全体をGND銅箔で覆う(ベタパターンにする)と、インピーダンスが面全体に分散され、どこから電流が流れてきても非常に低いインピーダンスで受け止められます。共通インピーダンスはゼロにはなりませんが、実害が出ないレベルまで小さくなります。

図4: GNDプレーン(ベタアース)。基板全面を銅箔で覆うことでインピーダンスを面全体に分散させ、どこでも低インピーダンスを実現する。

GNDプレーンは高周波でも有効

GNDプレーンは、1点GNDと違い高周波でも有効です。面状の銅箔は浮遊容量の影響を受けにくく、周波数が上がっても低インピーダンスを維持できます。さらに副次効果として、信号配線層のシールドにもなります。

2層基板では片面をGNDプレーン専用にするのが定番です。4層以上の多層基板では、電源プレーン(ベタV)とGNDプレーンをそれぞれ専用層に割り当てるのが標準的な構成です。


uSimmicsで比較する ― 1点GND vs GNDプレーン

低周波での比較

図5: 低周波での比較。1点GNDとGNDプレーンはどちらも有効。

高周波での比較

図6: 1点GNDではノイズが重畳しているが、GNDプレーンは問題ない。

周波数で考え方が変わる ― まとめると

1点GNDGNDプレーン(ベタアース)
原理共通インピーダンスをなくす共通インピーダンスを最小化する
有効な周波数直流〜低周波(数十kHz以下)低周波〜高周波(幅広く有効)
適した回路オーディオ、低周波アナログデジタル、高周波アナログ、混在基板
弱点高周波で浮遊容量により無効化共通インピーダンスはゼロにならない

現代のデジタル基板では、クロック周波数が数十〜数百MHzに達するため、GNDプレーンが事実上の標準です。一方、オーディオアンプや計装アンプのような低周波アナログ回路では、1点GNDが今でも有効な選択肢です。

アナログ+デジタル混在基板はどうする?

アナログ回路とデジタル回路が同居する基板では、GNDをアナログ領域とデジタル領域で分割し、1か所だけで接続する方法がよく使われます。これは「分割GNDプレーン+1点接続」という、両者の折衷案です。接続点はA/Dコンバータの直下など、ノイズの飛び移りが最小になる場所を選びます。

まとめ

  • 1点GNDは共通インピーダンスをなくす手法で、低周波アナログ回路に有効
  • 高周波では浮遊容量で効果が失われるため、デジタル回路には不向き
  • GNDプレーンはインピーダンスを面全体で最小化する手法で、高周波まで広く有効
  • 現代のデジタル基板では GNDプレーンが標準。低周波アナログには1点GNDも選択肢
  • 混在基板では「分割プレーン+1点接続」の折衷が現実的

GND設計に「絶対の正解」はありません。自分の回路の動作周波数を確認して、適切な手法を選ぶことが重要です。


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