「アルミケースに入れればシールドできる」と思っていませんか?
実は、金属ケースやシールド線はGNDに接続しなければ効果がありません。それどころか、浮いた状態のシールドはノイズを集めるアンテナになることすらあります。この記事では、シールドが機能する原理を等価回路から解説します。
シールドの3種類
空中を伝わるノイズには3つの経路があり、それぞれ対応するシールドが異なります。
- 静電シールド:静電誘導(ストレキャパシタンス経由)をブロックする。電気の導体を使用
- 磁気シールド:電磁誘導(磁力線の鎖交)をブロックする。低周波は磁性体、高周波は導体を使用
- 電磁シールド:電磁波(ファーフィールド)をブロックする。電気の導体を使用
3つは別々の現象ですが、実際の金属ケースはこれらを複合的に担います。以下では最も基本的な静電シールドから説明します。
静電シールド ― なぜGNDに落とす必要があるのか
静電誘導は、ストレキャパシタンス(寄生容量)を通じてノイズが伝わる現象です。ノイズ源Aと被影響回路Bの間に浮遊容量 C1 があると、Aの電圧変動がCを経由してBに伝わります。
ここにシールド(導体板)をA・B間に挿入するとどうなるか。等価回路で考えます。
GND接続ありの場合:AのノイズはC2を通じてシールドに伝わりますが、シールドはGNDに接続されているため電位がゼロに保たれます。シールド電位がゼロなら、C3を通じてBにノイズが伝わることはありません。
シールドが浮いている(GND未接続)の場合:AのノイズはC2でシールドの電位を変動させ、さらにC3を通じてBへ伝わります。シールドが「ノイズを中継するキャパシタの中点」になってしまい、シールド効果はゼロ、むしろ悪化することもあります。
「GNDに落ちて初めて効く」理由がここにあります。
電磁シールド ― 金属の「反射」と「吸収」
電磁波(高周波)のシールドは、金属が電磁波を反射・吸収することで機能します。
反射損失
空気中の波動インピーダンスは約 377 Ω。金属の波動インピーダンスは ≪1 Ω です。この大きなインピーダンス差により、電磁波の大部分が金属表面で反射されます。この効果だけで、薄い金属板でも大きなシールド効果が得られます。
吸収損失
金属内部に入った電磁波は、電流(渦電流)を流して熱に変わります。電磁波は金属内部を進むにつれ指数関数的に減衰し、ある深さ(浸透深さ、スキンデプス)で実用上ゼロになります。スキンデプスは周波数が高いほど小さく、高周波では薄い金属でも十分な吸収効果があります。
実用上の結論:薄い金属箔でも高周波の電磁波には十分なシールド効果がある。問題になるのは低周波の磁界(商用周波数帯の電源ノイズなど)で、これには高透磁率の磁性体(パーマロイ等)が必要です。
「穴」がシールドを台無しにする
電磁シールドが完全に機能するには、隙間なく囲むことが前提です。ところが現実のケースには、コネクタ穴・通風口・ケーブル貫通口・パネル合わせ目など、穴や隙間が必ず存在します。
重要なのは「穴の面積」ではなく「穴の長さ(長辺)」です。電磁シールドはシールド材に誘導電流が流れることで機能しますが、細長い穴があるとその電流経路が断ち切られます。面積が小さくても、細長い穴は大きなダメージを与えます。
対策:
- 通風口は大きな穴1つより、小さな穴を多数(電波の波長より十分短い径)
- ケース合わせ目は電気的に確実に接続(塗装があると電気的には「穴」になる)
- コネクタはシールド付きコネクタを使い、シールドシェルとケースをGND接続
シールドケーブルの接続 ― 片側 vs 両側
シールドケーブルのシールド線を片側だけ接続するか両側接続するか、という問題があります。
静電シールドの観点では、シールドをGNDに落とせば十分なので片側接続でOKです。両側接続するとグラウンドループができ、そのループに外部の磁界が鎖交してノイズを拾います。
しかし高周波の電磁誘導に対しては、シールドに電流を流すことでシールド効果が出ます。電流を流すにはループが必要なので、両側接続の方が有利です。
実験結果でも、低周波では片側接続が優り、高周波では両側接続が優ることが確認されています。扱う周波数に応じて使い分けるか、両側接続でループを管理した設計が現実的な対応です。
グラウンドプレーンのシールド効果
基板設計においては、金属ケースだけでなくグラウンドプレーンそのものがシールドとして機能します。
信号パターンをGNDプレーンに近接させることで、パターンの電気力線はGNDプレーンに向かい、隣接パターンへのクロストークが減ります。これはまさに静電シールドの原理です(GNDプレーンが電位ゼロの導体として機能)。
多層基板でGNDプレーンを中間層に配置し、信号層をサンドイッチするのは、シールド効果を最大化する構成です。
まとめ
- シールドには静電・磁気・電磁の3種類あり、それぞれ機能原理が異なる
- 静電シールドはGND接続が必須。浮かせると逆効果になる ― 等価回路で「なぜか」が理解できる
- 電磁シールドは反射と吸収の二重効果。薄い金属でも高周波には有効
- 穴の「長さ」がシールドを損なう。面積より長辺を意識する
- グラウンドプレーンもシールドとして機能する。近接配線でクロストークを減らせる


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