高速信号で起きる「反射」とは?
高速デジタル信号では、配線は単なる導線ではなく伝送線路として振る舞います。その結果、終端条件によっては信号の一部が送り返されることがあります。これが反射(reflection)です。
反射は「ノイズが混ざった」現象ではありません。インピーダンスが合っていないため、エネルギーの行き先が変わったという、物理的に自然な現象です。
この記事では、反射を最小回路で再現し、波形の「段差」として理解します。
反射の正体:インピーダンス不整合
伝送線路には特性インピーダンス Z0があります。受信端の負荷抵抗 RL が Z0 と一致していないと、到達した信号の一部は吸収されず、送信側へ戻ります。
このとき発生するのが反射波です。反射の大きさや向きは、Z0 と RL の関係で決まります。
最小回路で見る:反射だけを出す構成
まずは反射だけを分かりやすく見るため、負荷は抵抗のみにします。入力容量などの容量成分を入れないことで、リンギング(LC共振)を避けます。
反射を見る最小回路
Vpulse ── Rs ──●── TL ── RL ── GND
│
Vsrc(主観測点)
この記事では、Rs と伝送線路(TL)の接点(送信端)を主な観測点とします。ここでは反射波が遅れて戻ってくるため、段差として非常に分かりやすく観測できます。
uSimmicsで作る手順
1. 部品を配置する
- Pulse / VPulse(パルス電圧源)
- Resistor(抵抗)×2(Rs, RL)
- Transmission Line(Coaxial Line / RLCG Line など)
- GND
- Voltage Probe(Vsrc用)

2. 伝送線路の遅延について
uSimmicsでは、伝送線路のdelay(遅延)を直接指定しない部品が多く使われます。遅延は、線路長 L と比誘電率 er から自動的に決まります。
伝搬遅延 Td は次の関係で決まります。
Td = (L / c) × √er
FR-4相当(er ≈ 4)の場合、1mあたり約6.7nsの遅延になります。この記事では、反射を見やすくするため、遅延が約10nsになるように線路長を設定します。
3. パラメータ設定例
- Vpulse:0 → 1V、Tr = 0.1ns、Tf = 0.1ns
- Rs:50Ω
- TL:長さ L = 1.5m(約10ns遅延)
- RL:50Ω → 100Ω → 1kΩ → 25Ω(比較)
なぜ送信端で反射が見えやすいのか
反射は負荷端で発生しますが、必ずしも負荷端で「段差」として見えるわけではありません。
送信端では、まず入射波による電圧が現れ、その後、負荷端で反射した波が遅れて戻ってきます。この時間差によって、電圧が「あとから変わる」ため、反射が段差としてはっきり観測できます。
一方、負荷端では反射は発生しますが、反射波はすぐに伝送線路を逆向きに進むため、その場にとどまりません。このため、条件によっては段差として見えにくくなります。
波形で確認する:RLを変えると段差が変わる
Voutを観測し、RLだけを変えます。反射は「あとから波形が変わる(段差が入る)」として見えます。
ケース1:RL = 50Ω(整合)
Z0(50Ω)とRLが一致しているので、反射がほぼ起きません。Voutは素直に立ち上がります。

ケース2:RL = 100Ω(不整合:大きめ負荷)
反射が起き、Voutは立ち上がり後に段差が出ます。整合よりも「あとから」少し持ち上がる方向になります。

ケース3:RL = 1kΩ(ほぼ開放)
開放に近いほど反射が強くなります。Voutの段差もはっきり見えます。まず反射を体感するならこのケースが分かりやすいです。

ケース4:RL = 25Ω(不整合:小さめ負荷)
今度は段差の向きが逆になります。つまり、反射は「いつも上に跳ねる」わけではなく、終端条件によって方向が変わります。反射は「あとから現れる段差」として観測でき、その大きさや向きは終端条件によって決まります。

反射が問題になる条件
反射は「周波数が高いから」ではなく、立ち上がり時間が速いから問題になります。ICが高速化すると、同じ配線でも反射が無視できなくなります。
「昔は動いていたのに、最近は怪しい」という現象は、立ち上がり時間の短縮が原因であることが多いです。
まとめ:反射は送信端で段差として見える
- 反射は負荷端のインピーダンス不整合で発生する
- 段差として見えやすいのは送信端(RsとTLの接点)
- 遅延は er と線路長で決まり、反射の「戻り時間」を支配する
- まずは抵抗負荷だけの最小回路で理解するのが近道
反射は「どこで発生するか」よりも、
「どこで観測すると現象として見えるか」を意識することで、
波形の意味を正しく読み取れるようになります。

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