uSimmics(旧QucsStudio)は、無料で使える高機能な回路シミュレータです。QucsStudioとして知られていたこのツールは、バージョン5.8(2024年11月リリース)からuSimmicsという名称に変わっています。「QucsStudioで検索したらuSimmicsが出てきた」「ダウンロードページの名前が変わっている」と感じた方に向けて、改名の背景・変更点・今後の開発状況を整理します。
この記事でわかること
- uSimmics(旧QucsStudio)とは何か、誰が開発しているか
- QucsStudioからuSimmicsへの改名理由(2点)
- 名称変更後の機能・操作への影響
- 旧バージョン(4.x系)ファイルとの互換性と変換方法
- Qucsファミリー(Qucs-S・Qucs Original)とuSimmicsの位置づけ
uSimmicsとは
uSimmics(読み方:ユーシミックス)は、Michael Margraf(DD6UM)が個人で開発・メンテナンスしている無料の回路シミュレータです。Qucs(Quite Universal Circuit Simulator)プロジェクトをベースに独立して開発されており、独自のシミュレーションエンジンを持っています。
アナログ・RF設計からデジタル回路、システムシミュレーションまで幅広く対応しており、Sパラメータ解析、ハーモニックバランス、電磁界シミュレーション(FDTD)、KiCadとの連携など、プロフェッショナルな用途にも耐えうる機能を無料で使えます。
インストールは不要で、ZIPを解凍して実行ファイルを起動するだけです。この手軽さはQucsStudio時代から変わっていません。
なぜQucsStudioからuSimmicsに変わったのか
公式FAQによると、改名の理由は2点あります。
1. 名前の混同の解消
Qucs関連のプロジェクトには、Qucs Original・Qucs-S・QucsStudioと複数の派生が存在しており、それぞれが別の開発者・別の思想で作られているにもかかわらず、名前が似ているために混同されることが多くありました。uSimmicsという独自の名称に変更することで、他プロジェクトとの明確な差別化を図りました。
2. 発音問題の解消
「Qucs」は正確には「kjuks(キュークス)」と読みますが、見た目からは読み方がわからず、特に非英語圏のユーザーにとって導入の心理的ハードルになっていました。発音しやすい「uSimmics」への変更により、この問題が解消されています。
こうした背景から、2024年11月のバージョン5.8リリースに合わせてQucsStudioからuSimmicsへの移行が行われました。
機能・操作に変化はあるか
名称は変わりましたが、基本的な操作方法やワークフローは変わっていません。
回路図を描いてシミュレーションを実行するという基本フロー、各解析の操作手順、このブログで解説している各チュートリアルの内容は、uSimmicsになってもそのまま適用できます。
バージョン5.8はメジャーリリースとなっており、多数の新機能追加・改善・バグ修正が含まれています。名称変更と同時に、機能面でも大きなアップデートが行われたバージョンです。
QucsファミリーとuSimmicsの位置づけ
Qucs系のツールは複数存在しますが、それぞれ開発方針が異なります。
| ツール | 特徴 | 更新状況 |
|---|---|---|
| Qucs Original | オリジナル。オープンソース | 事実上停止(最終版2017年) |
| Qucs-S | SPICEエンジンとの統合に特化 | 散発的に更新あり |
| uSimmics(旧QucsStudio) | RF・高周波設計に強い。最多機能 | 積極的に更新中 |
Qucs OriginalはSPICE互換の汎用シミュレータとして開発されましたが、現在はほぼ更新が止まっています。Qucs-SはSPICEエンジン(Ngspiceなど)との接続に特化したフォークで、既存のSPICEモデル資産を活用したい場合に向いています。
uSimmics(旧QucsStudio)は、RF・高周波設計、電磁界シミュレーション、システムシミュレーションといった領域で際立っており、Qucsファミリーの中で最も機能が豊富です。3ツールの詳細な機能比較については、Qucs-Sとは?LTspiceやuSimmicsとの違いを解説【2026年版】も参照してください。
旧QucsStudioファイルをuSimmicsで使うには
uSimmics 5.8以降は、バージョン4.x以前のQucsStudioで作成した回路図ファイルをそのまま開くことができません。
この場合、QucsStudio 3.3.3-light を使って変換する必要があります。手順はシンプルで、3.3.3-lightで古いファイルを開いて上書き保存するだけです。保存後のファイルはuSimmics 5.9で通常通り開けるようになります。
QucsStudio 3.3.3-lightは、公式サイトのダウンロードページから入手できます。変換専用の最小構成版として提供されており、通常のシミュレーション用途には向いていません。
今後の開発状況
uSimmics(旧QucsStudio)はMichael Margrafによる個人プロジェクトです。開発リソースはサポーター(寄付)によって支えられており、新バージョンのリリース間隔は不定期です。
ただし、2024年11月のv5.8、2026年1月のv5.9と、着実にバージョンアップが続いています。公式FAQでは「uSimmicsは引き続き無料で提供される。オープンソース化の予定はない」と明記されており、当面は現在の形での開発継続が見込まれます。
Qucsファミリーの中でも最も活発に更新されているツールであることは、2026年時点でも変わっていません。
まとめ
- QucsStudioはバージョン5.8(2024年11月)からuSimmicsに改名
- 改名の理由は「Qucs系プロジェクトとの混同防止」と「発音問題の解消」
- 操作・機能の基本は変わらない。v5.8は多数の改善を含むメジャーリリース
- v4.x以前のファイルはQucsStudio 3.3.3-lightで変換が必要
- 個人プロジェクトだが開発は継続中。無料提供は維持される
このブログのチュートリアルはすべてuSimmics(旧QucsStudio)に対応しています。まだインストールしていない方は、インストール記事から始めてください。

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