LTspiceとuSimmics(旧QucsStudio)の違い・比較【2026年版】

LTspice vs uSimmics — シミュレータ比較 基本操作

無料の回路シミュレータを選ぶとき、LTspiceuSimmics(旧QucsStudio) の両方が候補に上がることが多くあります。どちらも無料でプロの設計現場でも使われていますが、シミュレーションエンジンと得意領域は根本的に異なります。「どちらを使えばいいのか」「両方必要なのか」という疑問に対して、用途と特性の観点から整理します。

この記事でわかること

  • LTspice・uSimmics(旧QucsStudio)それぞれのシミュレーションエンジンの違い
  • 機能の詳細比較(DC/AC/トランジェント・Sパラメータ・ハーモニックバランス等)
  • 高周波RF設計・アナログ電源設計それぞれに適したツールの選び方
  • Qucs-Sという第三の選択肢の位置づけ
  • 迷ったときの判断基準

LTspiceとは

LTspiceは、アナログ・デバイセズ(Analog Devices)が提供する無料のSPICEシミュレータです。元々はLinear Technology社が開発し、同社のアナログ・デバイセズへの買収後も無料提供が続いています。

SPICEエンジンをベースにしており、DC解析・AC解析・トランジェント解析を高速に実行できます。アナログ・デバイセズ製品のSPICEモデルが標準搭載されており、スイッチング電源やオペアンプを使った回路設計で特に広く使われています。

Windows・macOS両対応で、最新版はバージョン26(2025年12月リリース)です。インストール形式で提供されています。


uSimmics(旧QucsStudio)とは

uSimmics(ユーシミックス)は、Michael Margraf(DD6UM)が個人で開発・維持している無料の回路シミュレータです。旧称はQucsStudioで、バージョン5.8(2024年11月)から名称が変わっています。詳しくはuSimmicsとは?QucsStudioからの変更点まとめ【2026年版】を参照してください。

SPICEとは異なる独自エンジンを採用しており、Sパラメータ解析・ハーモニックバランス解析・電磁界シミュレーション(FDTD)など、高周波・RF設計に特化した機能を備えています。Windows専用ですが、インストール不要でZIPを解凍するだけで使い始めることができます。最新版はバージョン5.9(2026年1月リリース)です。


シミュレーションエンジンの違い

両者の最も本質的な違いは、シミュレーションエンジンです。

LTspiceはSPICEエンジンを使っています。SPICEは1970年代にカリフォルニア大学バークレー校で開発された回路シミュレーションの標準規格で、世界中の半導体メーカーがこの形式でデバイスモデルを公開しています。LTspiceはこの資産をそのまま活用でき、メーカー提供のSPICEモデルをダウンロードしてすぐに使えるのが大きな強みです。

uSimmics(旧QucsStudio)はSPICEと互換性のない独自エンジン(Qucsatorをベースに独自進化)を採用しています。そのため既存のSPICEモデルは使えませんが、代わりにSPICEが本来苦手とする高周波領域——Sパラメータ・ハーモニックバランス・電磁界解析——を高いレベルで実現しています。

なお、「SPICEモデルが使えない問題」を解決するために生まれたのがQucs-Sという別のツールです。詳細はQucs-Sとは?LTspiceやuSimmicsとの違いを解説【2026年版】をご覧ください。


機能比較

項目 LTspice uSimmics(旧QucsStudio)
シミュレーションエンジン SPICE 独自(SPICE非互換)
SPICEモデル互換
DC / AC / トランジェント解析
Sパラメータ解析
ハーモニックバランス解析
電磁界シミュレーション(EM)
システムシミュレーション
スミスチャート
フィルタ合成
インピーダンスマッチング設計
KiCad連携
スイッチング電源設計
デバイスモデルの豊富さ
対応OS Windows / Mac Windows(Wine経由で他OS可)
インストール 必要 不要(ZIP解凍のみ)

どちらを選ぶべきか

LTspiceが向いている場合

アナログ・電源回路設計が中心の場合はLTspiceが適しています。アナログ・デバイセズをはじめ各社半導体メーカーのSPICEモデルをそのまま使えるため、実際の部品に近い条件でシミュレーションできます。オペアンプ回路・スイッチング電源・フィルタ回路の基本設計といった用途では、LTspiceの安定性と速度は際立っています。

macOSユーザーにとっては、LTspiceが事実上唯一の選択肢でもあります。uSimmics(旧QucsStudio)はWindowsのみの対応です。

uSimmics(旧QucsStudio)が向いている場合

高周波・RF回路設計が目的であればuSimmics(旧QucsStudio)一択です。Sパラメータ解析・ハーモニックバランス・伝送線路のインピーダンス計算・フィルタ合成・スミスチャートによるインピーダンスマッチング・電磁界シミュレーションといった機能は、LTspiceでは代替できません。

このブログで扱っているテーマのほとんど——高周波回路・EMC・伝送線路・信号品質——はuSimmics(旧QucsStudio)の得意とする範囲に収まっています。


Qucs-Sという第三の選択肢

LTspiceとuSimmics(旧QucsStudio)のどちらでもない、という場面でQucs-Sが選択肢になることがあります。

Qucs-Sは、QucsのGUI(回路図エディタ)を使いながら、Ngspice・Xyce・SpiceOpusといった外部のSPICEエンジンを接続して動かすツールです。これにより、QucsのGUIに慣れたユーザーが既存のSPICEモデル資産を活用できます。

ただし、高周波・RF機能という観点ではuSimmics(旧QucsStudio)に劣ります。電磁界シミュレーションやハーモニックバランス解析はありません。またLinux環境での使用を前提に設計されており、Windowsでの動作は可能ですが導入の手間がかかります。詳細はQucs-Sとは?LTspiceやuSimmicsとの違いを解説【2026年版】をご覧ください。


迷ったらuSimmics(旧QucsStudio)から

高周波設計を主な目的とするなら、まずuSimmics(旧QucsStudio)から始めることをお勧めします。

LTspiceは「電源回路やアナログ回路の設計が必要になったとき」に追加で導入する、という順序が現実的です。Qucs-Sは「既存のSPICEモデルをどうしても使いたいとき」の選択肢として覚えておく程度で十分です。

3つのツールは競合というより、それぞれ得意領域が異なります。用途を決めてから選ぶことで、迷わずに始められます。


まとめ

  • LTspiceはSPICEエンジンベース。アナログ・電源設計に強く、SPICEモデル資産が使える
  • uSimmics(旧QucsStudio)は独自エンジン。RF・高周波・EM解析に特化しており、SPICEモデルは使えない
  • Qucs-SはSPICEエンジンをQucs GUIで使う第三の選択肢。RF機能はuSimmics(旧QucsStudio)に劣る
  • 高周波設計が目的なら、まずuSimmics(旧QucsStudio)から始めるのが最短ルート

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